第1話「未曾有の挑戦!」 著者 暗闇の帝王 2008.6月
第2話 第3話
「夢のカケラを継ぐ者」
トラックシリーズの更なるインパクトと、ハードルへ挑戦する事になったが、フジミ模型として
トラックのモデル化に関する経験はなく、どこにユーザーが重きを置くのかを把握しきれず、
それらの部分を補うべく白羽の矢を立てられたのが私でした。

フジミ模型からの要望としてお願いされたのは、他社とのダイレクトなバッティングを敬遠するという前提で商品化プランを幾つか提案して貰いたいというものです。
私が選んだのは、「4tフルアート車の開発」というもので、提案書造りは資料を付随した形で都合12ページに及ぶ内容となったのだが、それが後の街道美学パーツを産むことに繋がっていったのは、嬉しい誤算であると言えます。
しかしフジミ模型のトラックモデルに関する方向性はあくまでも純正カタログモデルを中心とした展開であり、私の提唱する「フルアート車」を開発する承認が得られずに企画は棚上げとされ月日は流れ、諦めていた時にスポット販売という条件付きながら承認が得られました。
そこで私が、まず危惧したのは、トラックに対する「経験の無さ」そして「認識不足」でした。

それを踏まえて提案したのは、トラックプラモ開発の経験値を得る為にも、モデルとなる車両は実車が現存する事。 そしてオーナーの協力で徹底した完全再現の為の取材が可能でなければならないという事でした。
その条件を満たし、尚且つ「フルアート車」の優美さを兼ね備えた1台として推薦したのが「三代目烈津號」であったのです。
その車両は北関東を代表する有名車でもあり、オーナーは、モデラーとしての技量も有名な人物でした。 車両に懸ける拘りは、自身が最も衝撃を覚えた80年代のフルアート車を徹底再現し、当時、用いられた手法と存在していたパーツで、時代に即した車両を表現するという物なのです。
私とは70年代と80年代の表現の違いはあれ、目指す指針を同じとしており、この新たな挑戦への第1モデルとしては充分な手ごたえを感じていました。
そして遂に夏の最中、フジミ模型の「三代目烈津號」開発プロジェクトが動きだすのです。

「男のロマン」
まず取材するに当たりフジミ模型がお願いしたのは、純正仕様の状態に近い状態にまで車両を戻してもらい、ベース車と飾り部分とに分けて取材をしたいという申し入れでありました。
フジミ模型のフラッグシップモデルである、エンスージアストシリーズと同様のアプローチで、フルアート車の再現に試みようというのです。
そう簡単に飾りという物は外す事が出来ない事もあり、良い返答が聞ける筈はありません。
これが至極まっとうな流れであると当然のように感じながらも、「トラックモデラーが、数十年間、思い描いた夢のプラモデルが実現するかも知れない最初で最後のチャンス」という話しをオーナーにさせて戴きました。
そこで諦めることは簡単であるが、チャンスというのは幾度も巡ってくるものでは無いのであるから、夢への架け橋役として出来る限りの事をしなければならないのです。
そうして遂にオーナーの首が縦に振られたのでした。
無茶な要望なのは百も承知であり、モデラー全体の夢などどうでも良いと云えばそれまでの話しなのだが、そこを快く承諾してくれるというのです。
男の心意気を感じさせる返答に、胸が熱くなり、その瞬間から模型史に残るプロジェクトになると感じずにいられませんでした。
実際に、三代目烈津號は仕事にも使われている車両であるのだが、オーナーは「モデラーの夢を叶える」という男の約束を果たすべく、取材期間は代車で業務をこなしてくれていたのを後日に知り、感謝の念が絶えないとともに、夢の実現とは誰か一人の歯車が狂っても到達できないものである事を感じるのでした。

「陽炎の立つ取材」
装着されていた飾りは、殆どが外された状態で取材は開始されました。
それぞれのセクションに分けて丹念に取材をしていきます。
それが烈津號と判るのは、キャビンに回された手すり、荷台のペイントという状況です。
徹底した総バラシによる取材は荷台のガゼット、蝶番にまで及び、それら全てを個別に取材して行きます。
動き出したプロジェクトの息吹は、明らかに他の企画と一線をかくし、何かに導かれるかのような勢いを得た様は、さしずめ企画に魂が宿ったかのような盛り上がりさえ感じられました。
夏の暑い日差しから、流れる汗が首筋を通り、胸元を流れ落ちるのを感じます。
スタッフも時間の経過と供に次第に無口となり、疲労の色が伺え、真夏の炎天下での作業が取材をより困難な物へとしていきました。
車体が終われば、次に飾りを個々に取材していくのだが、その点数たるや膨大な数に上ります。
当然のように、1度の取材だけでは全てを補いきれる訳もなく、図面が出来上がるまで幾度となく取材は行われ、最終的な取材が完了したのは、年明けにまで及んだのでした。
が、この先にとんでもないアクシデントが襲う事になろうとは…
この暑かった夏の日には、まだ誰も予期していなかったのです。
そう…陽炎のゆれる、あの日には…
(つづく)
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