第2話「プラスチック狂詩曲」 著者 暗闇の帝王 2008.6.3
第1話 第3話

「挫折からの始まり」
年が明け、図面が仕上がって来ました。
が、そこに描き出された車両は、烈津號のバランスとは大きく異なる容姿を晒していたからです。
図面に描き出されたのは、ノーマル状態の車両であったのですが、製図をする際にカタログ数値を優先していると伺える寸法でした。
デティールに関しては、烈津號ですが荷台幅がどうやらカタログの標準ボディ幅なようです。
烈津號は造りボディなので、荷台幅もキャビンより広く作られているのですが、図面上に描かれていたのはキャビン幅と同寸の純正荷台と思われる寸法だったのです。
その容姿はキャブハシゴだけが異様に車体幅より飛び出している不格好なもの。
何故こうなってしまったのか原因は判らないのですが、多くの箇所を指摘せざるを得ない状況でした。 もう1度、担当者と我々とで寸法を洗いなおすしかありません。
採寸チェックする際には、ノギス、角度定規を用いて過去の取材よりも詳細な採寸を行うようにしました。


「トリックプレー」
数値的な部分の間違いの修正は容易なのですが、厄介なのが「認識違いによる形状ミス」です。
個人的な主観ですが、フジミ模型の過去の製品を思い返してもメッキパーツが少ない。
そうゆう流れもあってか? メッキ部分の形状把握が苦手というのを感じました。
幸か不幸か烈津號はその全身の殆どをメッキ部品で纏われた車両です。
メッキへの写りこみが視覚を惑わせるのだろうと思うのですが、極端な表現をすれば凹を凸と勘違いするといえば解りやすいかと思います。
特にこの状況が顕著に見受けられたのが、フロント&コーナーパネル、ドアやグリルのスラント、そしてホイールと、これらは大苦戦をした部分です。
パネルは平面では無く、面は微妙な3次曲線で膨らみを持っており、時に反り返るようなラインと、グラマラスに飛んだデザインを魅せてくれています。
これを口頭や文章で伝えようにも伝わらないのです。
すでに異なる認識で見えている方に幾度説明をしてみても、トリックアート同様、把握するまでが大変なのである。
最終的に、そういった箇所はイラストを書き、絵で伝えるという方法を用いて難を越える事が出来ました。


この頃のKFやSSも同様なのだが、グリルは下方に向けてスラントし設置されており、真正面からみると下方にラインは窄まるシルエットを描く。
真横からみても同様のスラントで鎮座し、グリルは正面に対して斜めに装着されている。
ドアにしてもフロントから寝台に向けて平面ではありません。
だが、この特徴的なシルエットも多くの他社製品を見ても、再現されていないのです。
想像するにトラックに詳しくない方からすると、見落としがちな情報なのだろうと思います。
こういう形状の読み取り方は、水平直角に升目を描き、画像にトレースしていく事で、形状修正の必要性を伝える事が出来ました。
特にグラマラスな3次曲面のデティールというのは、デザイン上の要であるのだが、それを数値で読み取る事は難しいのです。

「連なる壁を越えて」
その対象物に対して知識があれば常識という事も、初の試みともなれば、全てをこと細かく指示をしないと、コチラが想像をしていなかったような間違いをするので油断は禁物です。
荷台床枠よりも突出したリアタイヤ、フロントタイヤのドレット値よりワイドである。
1目見てドレット値が間違っていると判ります。
乗用車となれば的確な判断が出来るエンジニアも、物がトラックとなると、こうも間違えるのだろうか?と不思議でなりませんでした。
それと大きな落とし穴であったのが、総バラシでの取材は画期的であったのですが、組み上げた状態を取材していなかったのです。
トラックが長年好きで見ていれば、そんな取材が無くても大よそ補完できてしまうので、全く気にしていませんでした。 しかしエンジニアの方々は、そうは行かないのです。
各飾り部品の取り付け方法や取り回し、補強のとり方を説明し伝える作業は、一筋縄ではありません。
まず用語が伝わらない歯がゆさ、そして全ての部分の持つ意味を説明していかなければ、認識を同じにはできないのですから。

では画像から読み取れないかというと、視点の位置により読み間違いをおこし易い。
例えば、車の真正面から撮影した画像でフロントに付くラッセルバンパーを見れば、視点の問題から見下ろす形となり、ナンバー枠はバンパーの天地幅のセンターより下に装着されているように見えます。
だがバンパー単体を真正面から見ると、ナンバー枠はセンターに付いているのが判るのです。
ここは、多くのデコトラモデラーの方も認識間違いをしている箇所であり、ご他聞に漏れずフジミさんも同様でした。
撮影された資料と採寸した数値、それらは膨大な点数に及びます。
まさにエンジニアと監修との必死のせめぎ合いの連続です。
こうしてトラックの模型史においてエポックメーキングとも思える、超精密再現な「三代目烈津號」のキットが、形となっていったのです。
(つづく)
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